医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2019年12月9日

(333)本当に偉い人だった中村哲先生

アフガニスタンの復興に命をかけた中村哲医師の死去は本当に悲しい事件です。12月 4日のネットニュースの第一報では、銃撃されたものの命に別状なし、でしたが、一転して同行の5人とともに殺されたと判明しました。
中村さんは九州大学卒の医師ですが、1984年パキスタンで医療活動を始め、政府の圧力から舞台をアフガニスタンに移しました。何よりもすごいのは、食糧もない状況では医療だけでは命を救えないとの思いです。砂漠化した国土を緑に変えるにはまず水が必要と、井戸を堀り、用水路作りを指導します。重機を自分で運転して工事を続け、何と1600本もの井戸を堀り、用水路を完成、かなりの地域を農業可能な緑地に変えました。
私が中村さんの活動を聞いたのは多分、2003年のマグサイサイ賞受賞の新聞記事からだと思います。すでに九州では有名人でしたから特に取材する機会はありませんでしたが、ネパールの岩村忍医師と重なり、偉い人だと感心しました。
身近で活動の中身を聞いたのは今年 5月の日本医学ジャーナリスト協会での特別講演でした。謙虚で訥々 (とつとつ) とした話し方で質問にも素直に答えておられました。著名な医師は自信満々、上から目線が多いのですが、そうでない人柄が出ていました。
事件の発端からテレビに釘付けになりました。現地での追悼行事、住民の感謝の言葉、柩を護衛する兵士、その柩を大統領が担いでいる映像。すごい!に尽きます。これだけ愛された日本人がいたかどうかと思うほどです。途中、用水ができて緑あふれる地域に一変した映像は感動的でした。
事件のおかげで中村さんの仕事が広く知られました。でも東京では、生前はさほどではなかった感じです。意義ある活動をもっと紹介し、寄付を集め、政府援助を引き出せたらもっとよかったのに、と思います。
犯人は分かっていませんが、やはりアフガニスタン国民でしょうか。民族だ、宗教だと世界各地で戦火が絶えないのは悲しいことです。

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