医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2019年12月16日

(334)地元のふれあいサロンで話す

 先週はたまたま地元の「ふれあいサロン」で話を頼まれました。週4日オープンの、高齢者向けの地域のたまり場です。このサロンは社会活動に熱心なご夫妻が自宅の一部を開放し、何人かの住民の協力を得て、絵画教室、カラオケなどの趣味の会なども開いています。「なんでも塾」はその1つで、月1回、住民自身が講師になって自由に語る講演会です。私はサロンの常連ではありませんが、中心のご夫妻と親しく、活動ぶりには心から敬服しています。
 私が選んだテーマは「変わる医療 変わらぬ医療」。地域の皆さんへの自己紹介も兼ねて、40年間の記者生活から見た日本の医療の概論です。20人ちょっとの方が集まってくださいました。
 私がいつも感じていることですが、この40年間は大きな技術革新があり、治る病気も増え、病院の設備や環境も良くなりました。しかし、その一方、患者軽視・医師本位の医療はなかなか変わりません。日本の自動車はどのメーカーも品質一流ですが、日本の病院は一流から三流、四流までバラバラです。質が軽視されています。
 そうした環境では医師は患者を治さなくてもよく、治すことに熱心ではなくなります。他の産業ではライバル社がいい製品を出せばその秘密を探り、できるだけ早く対抗製品を出そうとするのに、多くの病院はいい治療法が発表されても「うちはやっていません」ですませます。「だから病院・医師まかせでは治る病気も治りませんよ」と。
 具体的には、高血圧や高脂血症、うつ状態などは、過剰診断で不要な薬を飲まされていますよ、糖尿病は血糖降下剤よりは糖質減らしでよくなります、腰痛など不適切な治療が少なくないですよ、などと話しました。
 病気を抱えている方もいて、皆さん熱心で、いろんな質問もいただきました。人生 100年時代、よい病院とめぐり合うのと同様、こうしたサロンでの交流も大事です。

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