医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2017年12月4日

(233)インフルエンザの異常の話

 冬のインフルエンザ流行が始まりました。電車内にもマスク姿が増え、時々はゴホンゴホンと咳き込む人も見かけます。何はともあれ予防策。私もマスクは常備し、帰宅すると手洗いを心がけています。
 ところで、インフルエンザ患者の異常行動への対応を促す厚生労働省の通知が先月末、報道されました。以前、治療薬タミフルを飲んだ子どもが転落、飛び下りなどで死亡した事件が続きました。昨冬も54件の異常行動があり、 2人が亡くなったようです。未成年の患者は1人にせず、高層階の住宅ならしっかり施錠をしておくべきとの通知です。
 厚労省調査では異常は最近8年間で400件を超えました。タミフル、リレンザ、イナビルなどの抗ウイルス薬を使っている患者ばかりか、使っていない患者にも起きていることから、報道でも薬との因果関係は不明とされています。
 こと薬に関しては厚労省はたいてい甘い対応で、日本の専門家の多くも同様です。タミフルはインフルエンザの特効薬と評価され、使用量が急増中に出たのが異常行動でした。薬の副作用に詳しい浜六郎医師は、タミフルの効果が限定的なこと、異常行動を含む種々の副作用の可能性を指摘し、警告しました。しかし、専門家からの反論や批判もあり、厚労省もどちらかといえば否定的なスタンスのままです。
 私は日本の専門家や医師、そして国も、薬の乱用を許しているのが残念です。医師はインフルエンザに効かない抗生物質を処方し、欧米では出さない患者にも高脂血症薬、降圧剤、精神安定剤、うつ病薬などを飲ませます。浜医師によると、何とタミフルなどの抗ウイルス薬の人口1000人・1日あたりの日本の処方数はフランスの51倍、スウェーデンの300倍、英国の1270倍の多さです。そういえば10年ほど前には、日本は世界のタミフルの7割を消費しているとも報道されました。危険かも知れない処方はそのままで鍵に留意、が日本的対応のようです。
 一方、日本のインフルエンザの死亡率は世界でも最低レベルで、理由は抗ウイルス薬の効果だとの記事も見た覚えがあります。本当なら多少は気分も戻ります。肺炎に紛れているならがっくりですが。  

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