医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2017年11月27日

(232)介護職めぐるニュースあれこれ

 11月に明らかになった事件ですが、この夏、東京都中野区の有料老人ホームに入居していた83歳男性が介護職員に浴槽に沈められて亡くなっていました。寄る年波のせいか、介護に関するニュースが年々気になっています。
 入居者は (おそらくは便で) 一晩に3回も布団を汚したうえ、浴室も汚したので25歳の男性職員は「いい加減にしろ」とカッとして首を締め、浴槽に沈めたようです。
 介護施設職員による高齢者の身体的な虐待は珍しくなくなっています。厚生労働省の調査では2015年度に478人が暴力被害を受け、言葉などを含めた虐待全体の6割を超えました。虐待の原因としては「教育や知識などの問題」「職員のストレスや感情の問題」が指摘されています。
 とはいえ、正直のところ、職員の腹立ちもわかります。楽しくない下の世話、汚れがどんどん広がる。果たして私は我慢できるだろうか、と考えます。愛情をそそぎ、何年も介護してきた奥さんや実の娘、息子が、何かの拍子に憤怒・爆発する事件も毎年のように起きています。まして、これまで縁のなかった赤の他人です。
 長時間労働、過酷な夜勤、低賃金。そのうえ、身分も不安定のようです。政府の働き方改革に対応し、全国で老人ホームやデイサービス事業を展開する大手介護企業が来春から希望者を正社員化するとの報道 (11月22日付け『朝日新聞』) がありました。英断を讃える記事ですが、従業員の半数、約1500人がパート勤務だというから驚きます。介護企業が一時しのぎ的なパート職員主体だとすると、「とんでもない職員だ」で済むのかどうか、迷います。
 こうなると、器具やベッドを活用した汚れ仕事軽減や、根本的な人手確保が重要です。11月から技能実習制度に「介護」も入りました。途上国の人たちに技術を教えるとの名目でいろんな規制や条件がありますが、実際は人手不足分野の労働力確保策にすぎないことは明々白々です。でも、やりたくない日本人より、働きたい外国人実習生の方が高齢者にずっと親切な気がします。

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