医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2022年4月18日

(447)簡単に切られる都市の樹木たち

 私はおおむね週に 1度、都心の診療所に通っています。以前は電車でしたが、 2年ほど前からは、妻の運転する車で往復しています。新型コロナで東京に緊急事態宣言が出てから「電車だとウイルスを持ち込む恐れが高い」と考えた妻の提言に従っての行動です。中央高速道路が 3、40分、東京都道が20分ほどの往復で、ゆっくりできる時は中央高速でなく国道20号(旧甲州街道) をドライブで戻ります。
 診療所は東京オリンピックの会場だった国立競技場や神宮球場の近くです。神宮外苑と呼ばれる一帯はケヤキやクスノキの巨木、イチョウなどの巨木地帯です。その下を歩くだけでゆったりした気持ちになれます。
 2月初めの新聞で、それらの多くを伐採して高層ビルを建てる計画があること、さらにそれが都の都市計画審議会で承認されたと知って本当に驚きました。週毎の樹木の変化が楽しみで、コロナで狭まった生活では緑豊かな環境がいかに重要かを実感していました。おまけに私たちや家族には高額なマンションや店舗は無縁なので、緑が奪われるだけの計画に思えました。
 ユネスコの諮問機関という「イコモス」国内委員会は計画の見直しを求めており、 3月には別グループからも伐採の見直しを求める 5万人の署名が都に提出されました。東京の「街路樹を守る会」代表の投稿(『朝日新聞』 4月12日付) によりますと、品川区7000本、大阪市10000 超本、尼崎市1600本など樹木伐採は多くの都市で進んでいます。道路工事、落ち葉の苦情対策、倒木の予防などの理由からです。
 私が住む地域でもこの春はどこかが違うと思ったら、道路脇の数本の桜の老樹が太い切り株だけに変わっていました。近所からは散る花や葉の苦情があったらしく、お役所か土地所有者かの一番簡単な解決法は伐採だったのでしょう。面積があれば住宅や施設の建設で収益を期待できます。
 投稿では、樹木が地球温暖化の緩和や排気ガス被害の軽減、ストレス緩和などに役立っており、ドイツの「樹木保護条例」のように、樹木を保護する法律が必要だと提言しています。その通りですね。旧甲州街道のケヤキ並木では落ち葉の清掃をしている住民の方をよく目にしました。

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