医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2015年3月2日

(94)薬局の報酬支払いへの疑問

 「薬のカルテ」が未記載だったとのニュースが2月から何度か報道されました。最初に問題になったのは大手系列の「くすりの福太郎」という薬局チェーンでした。
 薬剤師が医師の処方箋に従って調剤する時は、患者さんごとに薬の効き具合や副作用などを薬剤服用歴として記録しておき、問題が起これば処方した医師に連絡をすることになっています。かつては病院が直接、患者さんに薬を渡していましたが、近年は病院外の薬局の薬剤師の手を経る「医薬分業」制度が広がってきています。監視の目が増え、より安全が高める仕組みがこの薬剤服用歴で、薬剤師が「おくすり手帳」に、出した薬の名前や量を記したシールを貼ると、410 円の診療報酬 (薬剤服用歴管理指導料) が受け取れるようになっています。
 問題の薬局チェーンは薬剤師不足で手が回らず、48店舗約17万件が未記載でした。もちろん、診療報酬は受け取っていました。
 さらにイオン系列の別の薬局チェーン「CFSコーポレーション」の20店舗でも約7万件が未記載でした。驚いた厚生労働省は日本薬剤師会など3業界団体に自主点検を要請しました。調査がまとまる3月には、未記載の薬局が他にいくつも出てくるでしょう。
 報道では、患者さんの安全が損なわれるとの建前にはなりますが、実際はどうでしょうか。私は1冊の手帳にまとめ、必ずシールを貼ってもらっていますが、別の薬局から薬をもらい、何冊も手帳をもっている患者さん、シールは捨ててしまう患者さんもいます。また、厚生労働省が期待するほど薬剤師は医師に連絡していませんし、そもそも医師は手帳をチェックしていません。現実には、薬局の診療報酬支払いの「名目」になっているだけだから、堂々と未記載がまかり通るのでしょう。
 処方箋で支払われる報酬のうち、本来の薬の価格は7割で、3割が粉末、錠剤、カプセルの数を揃えるだけの薬局の調剤費だそうです。厚生労働省は明らかに薬局を優遇しすぎているように思います。

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