医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2023年7月24日

(506)コロナを機に医療を見直す

 いろんな分野の仲間が参加している勉強会があります。私も会員ですが、先日の会で新型コロナと医療をテーマに話すように頼まれました。専門家の話は時々聞きますが、こんな折りに自分の知識を整理してみるのはいいかも、と引き受けました。
 新型コロナは2019年12月、中国・武漢市の市場関係者に広がった新型肺炎です。それが丸 3年以上も世界を震撼させるとは思ってもみないことでした。
 初期、とくに印象深かったのは英国船ダイヤモンド・プリンセス号でした。たった 1人の患者を乗せた同船が横浜港に入港した時はテレビニュースに釘付けになりました。乗員乗客3711人のうち日本人 3人を含む10人が最初の検査で陽性と出て、最終的には600 人超にも増えたのに驚きました。感染防止の難しさが改めて浮き彫りになりました。
 催しが次々と中止や延期になり、安倍首相の要請で学校も臨時休校になり、東京五輪も1年間の延期になりました。病院や介護施設での集団感染が各地で起こり、救急や通常医療が崩壊目前でした。
 医療担当記者だった私から見れば、こうなるのは当然でした。なぜなら密集混雑の待合室、 4人や 6人の大部屋、トイレなど、日本の病院設備はもともと感染症が移りやすい状態です。そして医師、看護師ら職員の人手不足がコロナ治療を難しくしました。
 私は日本の医療を批判してきました。国民皆保険制度はいいのですが、医療内容は病院や医師任せで、レベルがバラバラだからです。治しても治らなくても診療代は同じで、治らないで入院が長引く方が病院の収益は大きいのです。患者の半数を占める高血圧、糖尿病、高脂血症の患者に病院はすぐに薬を出しますが、私は間違いだと思っています。糖尿病は糖質制限食が一番なのに、学会は長く否定的な立場でした。
 米国厚生省は1979年に、高齢者の寿命を決めるのは生活習慣が50%、交友などの環境が20%、遺伝子が20%で、医療は10%に過ぎないと発表しています。要介護を防ぐには薬よりも食事や運動、交際が大切です。
 将来のためにはコロナにも十分対応できる医療設備や人員が必要です。その一方、多少は元気な私たちは医療に負担をかけずに生活を楽しみ、元気を続けるべきです。みんなと会える勉強会もその一つ、と私は強調しました。

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