医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2021年11月15日

(427)公立病院には余裕が必要では

 東京都立および公立病院の独立法人化が進められています。この 2年間、新型コロナ禍の中で公立病院の役割が見直されたと思っていたので、先日、東京歯科保険医協会との懇談会でその話が出た時はちょっと意外な感じがしました。
 東京都の小池百合子知事は、2022年 7月に都立・公社病院を独立法人化する方針です。これに対し歯科開業医団体の東京歯科保険医協会は、10月 5日、開業医団体の東京保険医協会と連名で「独立行政法人・都立病院機構設立案を撤回して欲しい」との要望書を小池知事に提出しました。
 対象は総合診療の駒込や専門科の神経、松沢など8 つの都立病院と、都保健医療公社の6病院+都がん検診センターの計15施設。都立だった荏原など数病院がいつの間にか公社に移っていることを今回初めて知りました。多様な職種、設備の病院は独立採算制でより柔軟な運用ができる独法化が良いとさらなる方針転換です。都はこれらの病院に年約 400億円の補助をしています。
 独法化、と言うとどうしても公費削減のイメージがあります。国立大学が法人化されから研究費が徐々に減らされたことが浮かびます。また、歯科の先生方の話では10年以上前に都立から独法化された病院は、経営のために病床を減らし、高額な差額ベッドを増やしました。
 新型コロナ対策として都は都立広尾など 3病院に専用病床を設置して対応しました。感染症や災害時には行政が運用する病院が力を発揮します。また、救急、小児、産婦人科などいわゆる不採算医療は減らされる可能性がありますが、一番不採算なのが、誤嚥性肺炎を減らすのに欠かせない歯科になります。
 医療で何よりも重要なのは患者に役立つことです。公立病院は民間病院にできないきめ細かな診療をし、予想外の感染症や事故、災害などにも対応できる余裕が欲しいと思います。公立、公社、独法化につれ、住民からは遠ざかっていく感じがします。

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