医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2021年2月22日

(392)ずさんな水虫薬も一件落着ですが

 次々と事件が起き、議論があり、結論が出て決着するとそれでお終い。関係者も国民も何日かするとすっかり忘れてしまう、いつもそんな感じがします。福井県は 2月 9日、ジェネリックメーカーの小林化工 (同県あわら市) に医薬品医療機器法違反で 116日間の業務停止を命じました。爪水虫など皮膚病用の飲み薬に多量の睡眠導入剤が混入、飲んだ人の 7割 239人に被害があり、22件の交通事故が起きたという大変な事件です。
 原料の継ぎ足しでの間違いが原因でしたが、この継ぎ足しを含めて厚生労働省が承認していない製造工程があったうえ、この手順書と立ち入り調査に備えた正しい製法記載の手順書も作り、出荷前の検査でも捏造がありました。この捏造は約40年も前からで、しかも経営陣や現場は承知していました。同社の製造していた約 500の薬の 8割近くの薬でこうした違反があったということです。
 正直なところ、すごい企業があったものだと驚きました。しかも、処分が軽いのにも驚きです。医薬品医療機器法では最長の業務停止期間とのことですが、これだけのことをしても業務停止で済むのが不思議です。善意を基本に医療関係の法律が甘めなのは事実ですし、厚労省と業界の一体の表れなのかとも思います。
 これまで最長の業務停止期間は化学及 (および) 血清療法研究所 (熊本市) の 110日間でした。2015年に発覚した違法はやはり未承認の成分を足し、添加物の量を変えて血液製剤を製造、10年以上も前から手順書を 2種類作り、厚労省の調査時には偽造した方を提出していました。偽造書はわざわざ紫外線を当てて古く見せていたというエピソードを思い出します。小林化工はその事件の時も知らん顔で偽造、捏造を続けていたわけです。
 厚労省が製造法をチェックするのは書類です。ひょっとすると、技術の進歩や新しく出た成分など届け出とは違う製法で作っている企業は実はたくさんあるのかも知れません。文書作りは手間だし、厚労省も面倒だし…とか。
 安全で有効ならいいのかな。その保証は企業任せで大丈夫だろうか。これから飲もうという薬を手にとって、つい考え込んでしまいます。

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