田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(366)強制不妊手術で医学界は反省するが
十分に理解できていないと思いながらも気になるニュースがあります。日本医学会連合の検討会が 6月にまとめた旧優生保護法下の不妊手術に関する報告書もその 1つです。
旧優生保護法は敗戦後の1948 (昭和23) 年、不良な子孫の出生防止目的で作られた法律です。強制不妊手術の対象は障害者からハンセン病、精神病患者へと拡大、1996年まで続きました。1998年に国連人権委員会は被害者への補償などを日本政府に勧告、昨年 4月に被害者へ賠償金を支払う救済法が成立しました。
136学会が加盟する医療系学術団体の日本医学会連合は昨年 4月から、役員や有識者による検討を続けてきました。報告書は、医療関係者が旧法の制定や運営に関与し、国際的な人権思想の流れのなかでも反省が希薄、放置してきたとし、「反省と被害者らへのおわびを表明すべきだ」と提言しました。
何をいまさら、の感もありますが、医学界が反省すべきであることは間違いないでしょう。ただし、診療科によって旧優生保護法との関係性が異なります。本来ならば産婦人科やハンセン病、精神科など被害者を多く出した診療科が率先して反省すべきでしょう。ひょっとすると、これらの関係学会に圧力をかけるのが連合の本当の狙いなのかも知れません。検討会の提言を受けた連合がどう対応するのか、注目したいものです。
医療分野を取材してみると、多くの診療科が患者を治そうとしているのかどうか、痛みを和らげようとしているのかどうか、本当に患者のためなのか、疑わしい場合が少なくありません。ハンセン病や精神病患者の強制隔離は国際的な批判を無視し続けました。大量の薬処方、抗生物質などの乱用なども問題です。
とても残念なのは、医療界の問題はどれもが10年も20年も前から指摘されながら解消されていないことです。