医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2015年1月21日

(88)素晴らしい医療者に育ってほしい

 もう20年ぐらい前から、私は毎年、大阪医科大学の新入生相手に「医学概論」の授業をしています。かつては 2週連続の講義だったことも、いまは大学に併合された付属看護学校の授業も引き受けたこともありました。この2、3年は毎年1月中・下旬の 1回になっています。その授業が今年は1月19日月曜日の午後でした。
 私は医療ジャーナリストとして、医師、看護師、薬剤師などの卵の皆さんに、どんな医療者になってほしいかを話します。一言でいえば「温かい心、豊かな社会性ある医療者」です。社会を知る重要な手段として、新聞などの報道の重要性も強調します。
 現役記者の時代、私は有力な医師の多くが報道というか、社会の動きに関心が乏しいのにびっくりしました。大学教授は自分がやっている医療行為の診療報酬の額も知らず、新聞で大きく報道された他の病院が始めた新治療法も知りません。厚生労働省の今後の方向などは論外です。医療は患者さんを治したり、苦しみを和らげたりするのが目的ですが、制度も新治療法も重要です。それに無関心なのは「温かい心」のない医師。医師に限らず、看護師、薬剤師ら医療者は患者さんのために絶えずアンテナを張っていなければいけない、と話します。
 授業の責任者の佐野浩一教授 (微生物学) は、数年前から私の授業の前の12月に、学生さんに新聞などの記事をテーマにした短いレポートを提出させています。そのレポートをめぐる意見交換も含めて90分ですから、授業はアッという間に終わります。
 昨年秋に神野哲夫・藤田保健衛生大学名誉教授(脳外科) から、ご著書『かかりつけ医の選び方』を送っていただきました。神野先生はその本に、若い医師への要望をくり返し書いています。「徹底して優しい人間になれ」「それに必要な人間学を学ぶには、読書が必要」「本を読まない人間が医学部に来るのではと思うほど医者は読書不足だ」と。授業では神野先生の本を紹介しながら「人間や社会を知るには本や新聞、雑誌を読まなければなりません」と、強調しました。
 レポートのテーマは12月当時に報道された受精卵検査やエボラ出血熱、高齢者の自己負担増など医療制度改革案、がんや再生医療などです。以前、書いた本人を名指しして内容を聞くと「だいぶ前に書いたので全然覚えてません」などの答えもあって驚いたものですが、今年はしっかりした答えばかりで安心しました。

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