田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(522)川崎病の全国疫学調査が終わりましたが
川崎病の全国疫学調査総括との冊子を先日、日本川崎病研究センターから送っていただきました。川崎病は発熱、目の充血、手足のむくみ、全身の発疹などを伴う乳幼児の原因不明の病気です。日赤医療センター小児科の川崎富作医師が1961年、従来とは違う熱や発疹の患者に気づき、1967年、50人の症状をまとめて論文発表をしました。川崎さんは国立公衆衛生院の重松逸造・疫学部長に新しい病気と訴えました。1970年度厚生省(当時)助成金による研究班が発足、診断の手引きを作り、公衆衛生院による大規模な疫学調査も始まりました。全国の病院に調査用紙を送り、約 2年分の患者の症状や治療をくわしく報告してもらうものです。第 1回調査の患者1857人のうち26人が心筋こうそくで亡くなっていました。免疫グロブリン療法の普及で心臓の冠動脈に異常がある患者の死亡率が激減したのも病院に調査データがすぐに知らされていたからでしょう。
疫学調査は2022年分までの27回で終了、患者約45万人のまとめが総括です。大がかりな調査で関係者は大変な苦労をされたようです。それぞれ12回も責任者を務められた柳川洋・自治医大公衆衛生学教授(現・名誉教授)と後任の中村好一教授(同)、同教室で38年間も実務を担当された屋代真弓さんらには頭が下がります。
総括には興味ある関連データもあります。調査絡みの日本語239 、英語113 論文一覧、鮮明な写真つき診断の手引き、川崎病疫学研究の歴史、そして川崎さんの世界各地での写真などです。川崎さんは2020年 6月、95歳で亡くなりましたが、ようやく今年 6月、しのぶ会が東京で開かれました。
日本ほど多くはないものの、各国で川崎病患者が出ています。日本では1979年、82年に大流行がありましたが、韓国でも1 、2 年遅れでやはり大流行しています。また、日本では20年以上も毎年増え続けていた患者が2020年からの 3年間は2018年の 6割に激減しました。感染症と疑われる川崎病だけに、新型コロナ対策の手洗いやマスクの効果かも知れないと言われています。
調査の終了は止むを得ないとしても研究は続きます。原因解明のビッグニュースが待たれます。