医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2023年9月25日

(514)もっと知って欲しい認知症

 9月21日は「世界アルツハイマーデー」、そして 9月は「世界アルツハイマー月」とのことです。厚生労働省ホームページによると、国際アルツハイマー病協会と世界保健機関(WHO)が制定しました。アルツハイマー病協会は1994年 9月21日、英国のエジンバラで開いた第10回の国際会議で認知症への認識を高め、患者と家族を助ける日として宣言しました。以来、この日を中心に毎年、世界中で関連行事が開かれているようです。
 認知症は記憶力や判断力が年相応以上に低下し、日常生活に支障が出る状態を意味します。原因はいくつもあり、一番多いのがアルツハイマー病で次が脳梗塞などの脳血管疾患といわれています。
 先日、たまたま認知症の方が書かれた本 (丹野智文著『認知症の私から見える社会』)を読みました。病院で認知症と診断された途端に家族や周囲から誤解や差別を受け、それまでの暮らしができなくなるとの訴えに驚きました。認知症で家族や介護職員たちが困るのは、幻覚・幻想や異常な興奮、行動、歩き回る徘徊などですが、これらの重い症状が出る前から家族は本人の言うことを聞いてくれなくなり、危ない、これはだめ、こうしなさいとの禁止、命令になり、本人を追い詰め、症状をひどくしてしまうとのことです。「これはできるのに」と思いながら諦めてしまうのです。本人に聞かずに家族の話だけで診断する医師が多いとの指摘もありました。
 発達障害もそうですが、認知症も個人差、個性と受け止めるべきかも知れません。確かに社会全体の認識がもっと高まる必要があります。
 厚生労働省の専門部会が 8月、日本のエーザイなどが開発したアルツハイマー病の新薬「レカネマブ」の製造販売を了承しました。 2週間に 1回の点滴薬で、病気の誘因のたんぱく質アミロイドベータを脳から除去する働きがあります。完治させるわけではないものの、進行を遅らせる効果が期待されています。日本の薬価は決まっていませんが、米国では年間約 400万円で、多く使われると保険財政に深刻な影響を与えそうです。

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