田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(488)精神科病院の虐待は桁違いです
精神科病院での虐待がまたまた大きな話題になっています。東京都八王子市の滝山病院は 288床の大部分 255床が精神科で内科を併設しています。 2月14日、警視庁が男性看護師を暴行の疑いで逮捕して事件化しました。
相原啓介弁護士の記者会見で病院の実態がかなり明らかになりました。相原さんは2021年に病院関係者から相談を受け、入院患者10人から話を聞ききました。患者を殴ったり、大声で脅したりしている動画や録音からも虐待は明らかで、警視庁に暴行などの告発状、東京都に調査と厳重処分を求める申入書も提出しました。
精神科病院の虐待は、介護施設や保育園と違い、昔から何度も話題になりました。栃木県の報徳会宇都宮病院、大阪府の大和川病院、神戸市の神出病院などの事件です。日本は精神科病床数も入院日数も世界でダントツです。精神病への偏見から家族も患者を遠ざけがちで、治療より収容中心の医療になっています。看護師や職員も患者を軽視し、他の診療科には見られない虐待的な扱いがかなり残っています。
滝山病院はどうやら最も問題のある病院のようです。都内の病院に勤務する知人の精神科医によると、滝山病院は「身寄りのない患者優先の病院」で知られています。自由に治療でき、退院不能、亡くなっても文句は出ないし、生活保護受給者なら公費負担です。精神科には珍しく血液透析をしているので、透析が必要な患者は遠方からも集まります。過剰な治療は大きな利益を産みます。半面で苦しむ患者も多く、それが最大の虐待なのかも知れません。
2001年に発覚した埼玉県の朝倉病院事件では、過剰な治療で40人もの患者が亡くなったのですが、多くは身寄りのない高齢者や生活保護者でした。その院長が現在の滝山病院の院長です。
「行政も本当は病院の実態を知っているはず。でもこうした病院が無くなると患者の行き場がなくなるから困りますよね」と知人の弁。
9割が民間任せという精神科医療はなかなか変わりそうにありません。