医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2023年2月20日

(486)重い脳卒中患者さんのすごい作品

 世の中には本当に偉い人がいます。会って話を聞くと感動し、涙が出ます。私にとってその 1人は言語聴覚士の横張琴子さん (89歳) です。
 3月7日 (火) から12日 (日) まで千葉県松戸市の松戸市文化ホールで作品展「生命の灯ふたたび」が開催されます。横張さんの指導を受けた人たち約40人の絵画や書道などの作品が展示されます。指導を受けたのは脳卒中の患者さん、多くは話せない失語症や半身まひなどの重い障害のある人たちです。その人たちが何年もかかって身につけた素晴らしい技術にだれもが驚きます。
 横張さんは障害児教育の先生でした。1979年、アキレス腱断裂で入院した病院で横張さんが言語治療に詳しいと知った医師と看護師長が、入院中の失語症患者の言語治療を頼み込みました。了解した横張さんは何と患者さんをベッドサイドに呼び、寝たままの状態で言語治療を始めました。これが出発点でした。
 周辺の病院からも依頼があり、横張さんは言語聴覚士として失語症の患者さんの言語訓練やリハビリにのめり込みました。言語機能だけでなく仲間や生き甲斐が必要と感じて患者さんと家族の会を立ち上げました。
 横張さんは絵画や書道が好きでした。動かない患者さんの手に自分の手を重ねて、○や×、線、絵の模写、などを何度も何度も練習させました。少しずつ書けるようになると患者さんは喜び、自信を持ち、いろんな機能も改善していきました。病院での脳機能障害の積極的リハビリは約 6カ月で終了し、大半の患者さんは話せず、動けない状態のまま終わっています。一方、発病して何年も経った患者さんが横張さんの会のリハビリで改善しているのも事実です。
 1986年から隔年の「生命の灯ふたたび」展はコロナ禍で、今回が 5年ぶりの開催になりました。高齢で体調もすぐれないこともあって横張さんは今回が最後の作品展になるだろうとおっしゃっていました。

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