田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(404)アスベストの害はわかっていたのですが…
先週 5月17日、最高裁小法廷がアスベスト被害に対する国や建材メーカーの賠償責任を認める判決を出したとのニュースがありました。同様の訴え33件のうちの先行 4件について判断を示し、高裁に心理を差し戻したのです。最高裁は、国は屋内作業時にマスク着用を義務づけるなど十分な規制をすべきだったのに、危険性を認識していた1975年10月から使用や製造を原則禁止した2004年まで怠ったと認定しました。また、メーカーはアスベストを含む建材だと警告すべきことを怠りました。
アスベスト (石綿) は鉱物性の繊維で、耐圧耐熱絶縁性などにすぐれ、電気器具、自動車部品、壁材、建築材などに広く使われています。針状の粉じんとして飛び、作業者が吸い込み続けると、中皮腫というがんや肺がんになる可能性が高まります。
判決を受けて菅首相が翌日、原告団に謝罪し、政府が補償に合意しました。まずい結果を素直に受け止めたのは近年の政府らしくないと思ったのですが、あるいは自分たちの責任ではない昔のことだったからかも知れません。
アスベストの害はかなり有名でした。スクラップ帳を見ると、75年 8月には「便利で用途は広いが肺がんの原因にも」といった見出しで健康面のトップ記事になっています。81年 3月には「そろそろ多発が心配・石綿によるがん」「近く潜伏期満了」との警告記事。89年 2月には「アスベスト排出・法規制へ」との社会面ニュースも出ています。
かすかな記憶ですが、89年の後か、75年からの何年後か、アスベストを規制する法律を準備した役所の担当者が国会に提出するのを忘れ、転勤してうやむやになったらしいとの話が記者仲間の会で出ました。結局は「お役所仕事だからね」で終わったのですが、今回のようなニュースを見ると、何となく胸が痛む感じです。