医療ジャーナリスト 田辺功

メニューボタン

田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2015年7月27日

(114)あまりにも鈍感だった教師

 
 岩手県の中学2年生、13歳の男子生徒のいじめ自殺事件はとても衝撃的でした。しかも詳細がわかるにつれ、やり切れない思いが強まります。
 一番の驚きは、1年生の時から「生活記録ノート」で生徒と担任がやりとりしていたことです。そこには「悪口をいわれた」「もうげんかいです」「つかれました。もう死にたいと思います」などといった記述がありました。また、別のアンケートでも、生徒は「いじめられたりする時がある」などと答えていた、というのです。
 周りの生徒もいじめは結構知っていました。生徒は何度も訴え、「死にたい」とまで意思表示していました。いじめで自殺した生徒が担任に何度も直接、訴えていたケースは初めてではないでしょうか。担任はおそらく、まじめに受け取らず、パフォーマンスかオーバーな表現と思い込んだのでしょう。また、校長や教頭は報告がないから気づかない。いつまで経っても、何も変わらないはずです。
 全国で数十人の中学生が自殺していても、担任で割れば、遭遇するのは2 ~3 千人に 1人くらいです。お医者さんも、ニュースで聞いていた珍しい病気や薬害患者は、 1人が目の前に現れるまでは他人事のようにしか思えないといいます。
 昔の担任は休み時間や給食時間、放課後も生徒と遊んだりしていましたが、今どきの先生は学校に提出する記録や書類に追われています。会議も多い。日常の生徒の様子など、告げ口がなければわからない。生活記録ノートを全部読み、簡単な返事を書くだけで時間を取られます。「いじめられてる」「そう。大変よね、負けないでがんばってね」でお終いです。教育の目的とは何でしょう。何のために忙しいのか、疑問です。
 神戸の事件、長崎の事件など「人を殺してみたい」中学生、高校生が出る時代です。「死んでもかまわないからいじめたい」生徒がその何十倍もいる可能性があります。子どもを守るのも、変えるのも教育から。まずは教師がもっと鋭敏でなければなりません。
 さらに両親の役割、そうか祖父母の役割も…と連想が広がります。

トップへ戻る