田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(113)新国立競技場、見直しは当然だが
先日、大学教養部のクラス会というのがあり、10人ほどが集まりました。2年間の理科系クラスで、その後、応用化学とか機械工学科などいろんな学科に進みます。建築学科に進んだのが 2人いて、盛んに質問されていました。オリンピックのメイン会場となる超高額の新国立競技場建設問題です。
まあ、今更ともいえますが、それにしても政治家や官僚、有識者の言動は無責任極まります。総工費1300億円を目安に国際公募した設計が7月7日、2520億円にもなるのに事業主の日本スポーツ振興センターが了承しました。実際は悠に3000億円を超え、開閉式屋根の分 260億円を先送りし、一部を簡略化してその額ということです。過去の会場建設費は最高のロンドン五輪が 650億円、北京は430億円。物価の上昇はあるとしても余りにも違いすぎる高額です。そもそも1000兆円借金国家の日本が、最初から1300億円クラスを想定していたのも信じられないほどの太っ腹です。
安藤忠雄氏らの審査委員会は工費をまったく考慮しなかったのでしょうか。同級生の建築家は「条件がある以上、工費無視は考えられないし、大幅超過になれば普通は失格になる」「あのデザインは上空から見ると面白いが、地上からは魅力的だろうか」などと首をひねっていました。
安倍首相の決断で再募集、見直しが決まりましたが、前日までこだわっていた組織委員長の森喜朗・元首相がデザインを「元々嫌だった」などと、手のひらを返す発言をしたのにも驚きました。
政治家や官僚は税金の浪費家です。役所の移転新築、豪華な施設の箱物建設は自分たちの業績になります。税金は他人の金ですから、自分やお友だちの利益になればいくらかかろうといいのです。借金を増やしながら、現に各省庁はいろんなアイデアで企業や団体に補助金をばらまいています。
安倍内閣の強硬路線にはさすがに批判が高まっています。安全保障法案は中身が複雑ですが、五輪会場建設はだれにもわかる問題です。こちらを譲歩して内閣の延命策を図るのは当然でしょう。