田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(89)日本人の拘束事件にハラハラ
先週1月21日の新聞朝刊はイスラム過激派組織「イスラム国」が日本人男性2人を拘束したニュースではち切れそうでした。身代金2億ドル(236億円)は信じられない高額ですが、中東訪問中の安倍首相がイスラム国対策に出すと表明した額とのことで納得しました。この後の対応も見ると、イスラム国の幹部はなかなかの切れ者です。
日本人は昨年8月に拘束された湯川遙菜さんと、昨年10月にシリアで消息不明になったフリージャーナリストの後藤健二さん。この2人と黒服の男の映像を背景に、日本の「馬鹿げた決定」への非難と、72時間以内に同額の身代金を払わないと2人の命はない、との要求です。自己顕示欲が強くて言動が軽い安倍さんがまいた種でしょう。
報道が正しいとすると、湯川さんは軍事会社を設立したとかいうアブナイ人に対し、後藤さんはまじめなジャーナリストで、友人である湯川さんの救出にわざわざシリアに向かったようです。後藤さんはとくに難民や子どもたちの悲惨な状況を伝えようとしていたというから立派です。
日本政府はさまざまなルートで2人の解放に努力しているそうです。しかし、日本の外務省は世界で最も外交下手で、外交官は東京指向。現地の政府機関とも親しく付き合えていないのに、過激派組織へのルートがあるはずがありません。無償協力した国にお願いするにしても、当時、ピンハネさせた高官が失脚していたらお手上げです。
イスラム国は24日に衝撃的なメッセージを発表しました。湯川さんはすでに処刑し、後藤さんは身代金でなく、ヨルダン政府に捕まっている女性テロリストとの交換で釈放するというのです。これだと米国の反対する身代金の形を避け、日本からヨルダンへの援助に含めることができます。日本国民は湯川さんに税金をつぎ込むのは抵抗があっても、後藤さんになら我慢できそうです。ヨルダン政府の決断次第で展開もありえます。
イスラム国は米国の空爆で石油施設が壊され、身代金が石油収入の補填になっていると見られており、同様の事件が増えそうです。そもそもイスラム国の台頭は米国によるフセイン政権転覆、それに関連したシリア政権の弱体化が原因です。中東地域に対する欧米の対応は根本的に間違っている気がします。