医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2023年5月22日

(498)マイナーカード大丈夫かなあ

 政府や自治体が利便性を大宣伝しているマイナーカードでの基礎的なミスにはがっかりさせられました。国民1人1人付けた12桁の個人番号カードのことです。
 カードで便利なのは役所に行かなくても情報や手続きができる点です。たとえば戸籍謄本や住民票の写しはコンビニのマルチコピー機で取れます。ところが 3月27日、横浜市の2つの区役所に「他人の住民票が出てきた」との連絡がありました。交付が集中して一部にエラーが発生したもので、川崎市、東京都足立区と合わせて計5件ありました。戸籍情報が他人の目に触れたのも問題ですが、そもそも個人番号を機械が間違うとは信じられないミスです。
 登録を抹消した古い印鑑登録書がコンビニで交付されたというミスが熊本、さいたま、新潟の3市で計11件ありました。新しい登録書でないと使えません。住民票、登録書とも同じメーカーの機械で、プログラムが修正されました。
 政府は国民が加入している健康保険の多数の保険証を来年秋からはカード 1本に変えようとしています。これがマイナ保険証で、パソコンなどで自己の診療記録などを読むことができます。ところが、保険証とマイナ保険証の切り換え事務での誤りが22年11月までの1年間に7300件もあったと報告されています。名前の読み方、生年月日の間違いで該当者が消えたり、同姓同名を取り違えるケースなどです。多くはすぐに直されたようですが、実際に他人に自分の医療情報が見られたのも5件ありました。
 カードの交付率は6、7割と高いのですが、マイナ保険証としての活用は1割程度にとどまっています。医師・歯科医師団体の保団連はマイナ保険証は高齢者には使いにくく、1本化は国民皆保険制度に反すると早くから反対しています。安全で便利だとだれもが納得して使えるようになるのはまだまだ先になりそうです。

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