医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2022年6月20日

(455)感染症危機庁の目的は素晴らしいけど

 政府は 6月17日、新たな感染症対策の司令塔となる「内閣感染症危機管理庁」を内閣官房に常設することを決めました。 2年半にも及ぶ新型コロナウイルスの流行には本来の担当官庁である厚生労働省の「対策推進本部」だけでなく、首相直轄ともいうべき内閣官房の「対策推進室」がありました。安倍・前首相が厚労省を無視していくつかの指示を出したことに抵抗や批判があり、政府の有識者会議は15日、司令塔を一本化すべきとの報告書をまとめていました。司令塔の常設で早い段階から感染症への対応が可能です。
 また、政府は基礎研究中心の国立感染症研究所と臨床の国立国際医療研究センターを統合し、米国のCDC (疾病対策センター) に習った「日本版CDC」を創設することも決めました。厚労省に総合的な感染症対策部を設置したり、病床を確保しやすい対策なども整備します。今秋には具体策がまとまる予定です。
 これまでの政府の新型コロナ対策はどうだったでしょうか。初期は方針が定まらず、保健所は人手不足で麻痺、検査器具の不足、医療現場もクラスターや人手不足で混乱、かなりのドタバタでした。一方でワクチン、「三密回避」、マスク使用の徹底は成功でした。遺伝要因や食事の影響もあるのか、とにかく感染者数、死者数は欧米諸国とは段違いの少なさで抑えています。管理庁があれば初期の混乱も防げたはずです。
 趣旨はいいとして問題は実行力です。専門家会議は将来の爆発的な感染症に備え、研究者や保健所職員の増員など対策強化を提言する新型インフルエンザ報告を2010年にまとめました。先見の明があったわけです。ところが政府はそれに賛同しながら、予算節約のために保健所及び職員減、国公立病院の統廃合など、まったく逆の政策を進めました。
 地震や水害、道路や橋の管理などで指摘されるように日本人は目前の対応は上手なのに未来は軽視しがちです。危険地域にもいつの間にか家が建ちます。
 新型コロナの感染が収まり、仕事が激減しても管理庁は存続できるでしょうか。巨額の予算で海外の研究者も支援するCDCをどこまで真似できるかも注目です。病院の職員を増やし、設備を充実する政策も必要と思います。

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