田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(384)ずさん過ぎます水虫薬
あきれはてる事件がまたまた起きました。水虫治療などの飲み薬に睡眠導入剤成分が混入したというのです。しかも、混入というにはあまりにも多量。聞けば聞くほど恐しくなってきます。
この薬は抗真菌剤「イトラコナゾール錠50『MEEK』」です。製造した福井県あわら市の小林化工が12月 4日、自主回収を進めていると公表しました。服用後に意識がもうろうとするなどと患者が訴えているとの連絡が数日前からあり、調査したところ、製造工程で社員が誤って睡眠導入剤成分を入れたことがわかりました。
福井県の調査によると、抗真菌剤は31都道府県の364 人に処方され、12日までに 134件の副作用報告がありました。抗真菌剤 1回分には通常より何倍もの睡眠導入剤量が入っており、薬を飲んだ後に車を運転し、眠気を催して事故を起こしたケースが15件もあったというのには驚きます。大事故にならなかったのなら奇跡的な幸運でした。入院中に亡くなった患者が 1人あったとのことです。
小林化工は特許期限切れの薬を安く供給するジェネリック薬メーカーで、抗真菌剤もベンゾジアゼピン系睡眠剤もジェネリック薬です。福井県や同社の話によると、今年 7月ごろ、1 人の職員が製造工程で原料を継ぎ足す際に間違えました。
薬の製造装置や使い方、原料成分の置き場、職員の年齢や勤務状態、経験、知識など、まったく明らかにされていませんから、状況も浮かんできません。会社の会見では 2つの原料の入った小型缶と大型容器は形状も材質も違い、「取り違えることのないレベル」だそうです。しかも、厚生労働省承認の製造法では材料の補充などはないうえ、現場作業は常に 2人でチェックしながら行う内規なのに、職員は単独行動でした。故意だった可能性もありますし、犯罪も容易な製造現場でした。
中国の食品製造会社で職員がうっぷん晴らしに餃子に毒を入れた事件、日本の著名な製薬メーカーが厚労省の承認と違う方法で製剤を製造し、長い間、それを隠していた事件などを思い出します。薬も安心して飲めない時代です。