田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(330)ハンセン病家族補償法が成立しました
ハンセン病元患者の家族に対する補償や名誉回復のための2つの法律が11月15日の参議院本会議で可決・成立しました。元患者だけでなく家族も地域で孤立したり、差別されたことへの国としてのおわびを形にしたものです。
ハンセン病家族補償法は元患者の親子、配偶者に1人180万円、兄弟姉妹や同居していた甥や姪、孫らに130万円を支給するものです。熊本地裁は6月28日、元患者家族561人が国に損害賠償と謝罪を求めた集団訴訟で国の責任を認め、賠償を命じました。この判決をもとに超党派の国会議員懇談会が法律案をまとめました。法律の前文には「国会および政府は深くおわびする」との謝罪が書かれています。もう1つの法律は、名誉回復の対象に患者家族も加える、改正ハンセン病問題基本法です。
ハンセン病はかつては「らい病」と呼ばれ、重症だと顔や手足が変形して醜くなるために気味悪がられ、差別や偏見の対象になってきました。1873年に原因菌が発見され、発病率はあまり高くない感染症と分かりました。しかし、1907年、日本政府は患者の隔離政策を始め、軍国主義下でこの分野の第一人者だった医師が厳重隔離を主張したこともあり、1953年に強制収容を続ける「らい予防法」を制定しました。国際専門家会議やWHO(世界保健機関)は何度も「ハンセン病の隔離政策は不要」との決議をしましたが、日本政府は無視を続け、らい予防法は1996年まで存続しました。患者は治っても家族から切り離されたままで、迷惑をかけないようにと多くは名前も変え、国立療養所などで虐待されながら生活せざるを得ませんでした。元患者への賠償を命じる判決は2001年に出ています。
ハンセン病は感染性が弱いと指摘した良心的な医師を学会は “国賊” 扱いして除名しましたし、今と同様、政府は海外からの批判を国民に知られないように隠していました。隔離が不要と知って、らい予防法の廃止の訴えが高まったのに、政府は何年も廃止や対策を引き延ばしていました。
それにしても、元患者・家族や国に被害を与えても、だれも責任は問われないのですから、同じようなことが繰り返されるはずです。