田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(8)BSE全頭検査の非科学
BSE(牛海面状脳症)のことを覚えていますか。世界中で日本だけが実施していたBSE「全頭検査」が厚生労働省の方針で終わりそう、というニュースがあります。
前回のコラムでは、医療はとても非科学的なことが多い分野だと書きました。実は日本では医療に限らず、警察や裁判や一般の行政、政治家の発言、さらには研究者や科学者、そして報道まで、科学的には理解しがたいことが少なくないのです。BSEの全頭検査が代表的な1つです。
BSEは異常たんぱく質がたまって牛の脳がスポンジ状になる病気で、食べた人間に感染する危険があります。日本で感染牛が見つかった2001年、国は出荷される全ての牛の脳などの検査を実施することを決めました。2005年からは生後21カ月以上の牛だけでよくなりましたが、ほとんどの自治体では現在も全頭検査を実施しています。
一方、欧米諸国は2001年当時から生後30カ月以上の牛しか検査していませんでした。なぜならば、それ未満の若い牛は、感染していても異常たんぱく量が少なく、検査で見つからないからです。クロでもほとんど見逃すので検査の意味がないのです。しかし、日本では「安全より安心」といいます。国民は検査した方がしないより安全だと思い込まされたのです。獣医師さんや技師さんは分かっていたのかどうか、このために忙しく働かされ、また、10年で200 億円とかそれ以上の税金がむだに使われました。
新聞社時代、私は何度も担当の後輩に「科学的事実」を書くよう勧めました。しかし、若い記者は怖がって書きません。仕方なく、私は退職直前の2008年 2月、他のケースもまとめて「それ本当ですか?ニッポンの科学」と題する 9回の連載をしました。デスクはおっかなびっくり。その意を受けて、よりぼかした表現にしました。それから 5年経ちましたが、今もきっとやめるべきでない、だまされるな、と主張する人がいるはずです。おいおい、日本人よ大丈夫か、と思いたくなります。