田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(313)保険でよい歯科医療を、の願い
東京歯科保険医協会とは長い付き合いになります。事務局と広報担当理事らが新聞や雑誌、フリーの歯科担当記者に会の活動を伝えるメディア懇談会が隔月毎に開かれており、私はできる限り参加することにしています。
7月12日は6月に再選された坪田有史会長が出席し、2期目の抱負などを語ってくれました。
今回の目玉は『21世紀にふさわしい歯科改革提言2019年度版』でした。9年前に初版ができていますが、行政や国会議員に働きかける材料として、坪田会長が見直し版を強く求め、実現しました。A4の30ページ、6章の内容です。
第5章「緊急に改善を要する歯科の課題と提言」には、同協会が日常的に求めている課題が列挙されています。まずは「窓口負担を段階的に減らしてゼロに」「新規技術の積極的な保険導入を」「感染防止策などへの評価」など、保険による歯科医療の充実です。
歯科は高価格の義歯など保険外診療が少なくありませんが、協会の会員は保険中心の歯科医師たちですが、全国の仲間とともに「保険でよい歯科医療を」運動を進めています。歯周病は糖尿病などの誘因で、口内の不潔は誤嚥性肺炎を招きます。しかし、歯科の病気は命にかかわらないと思われがちで、必要なのに受診しない人たちが全国で160万世帯もいると推計されています。保険での歯科医療充実の要望は当然です。歯科の保険点数は医科に比べると低く、保険だけでは経営が難しいことから、10%以上の診療報酬引き上げも提言の 1つです。
歯科医師数は過剰気味といわれます。今後の人口減少を考慮して歯学部の入学定員減や統廃合、研修医の保険診療の窓口負担をなくして臨床研修の量や質を改善して技術向上を図る、医科歯科連携の重要性から病院への歯科医師の配置推進なども要望項目になっています。
「保険でよい歯科医療を」運動の前身は1982年に始まり、私はその時から協会の活動を新聞で紹介してきました。38年も経ったことの感銘と同時になかなか実現できないことの虚しさも感じています。