田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(93)大企業への優遇税制に関心を
日本の法人税は高すぎる、として、経済界は一貫して政府に法人税率の引き下げを求めており、安倍内閣はそれに応じる方針です。でも、それは事実でしょうか。
全国保険医団体連合会の機関誌『月刊保団連』2月号の特集に、その主張を根本から疑わせる論文が掲載されました。筆者は元国税庁職員でもあった富岡幸雄・中央大学名誉教授です。私は早速、ジェイキャストニュースで紹介しましたが、一般の新聞ではなぜか、こうした話はほとんど載りません。
日本の法定の法人税は東京都の場合、14年度は35.64%で、毎年下がり、政府は数年がかりで20%台にする予定とのことです。シンガポールは17%、英国は23%、ドイツ29%、フランス33%だとかで、日本はたしかに高めです。ところが、富岡さんの調査によると、日本では企業規模で平均税率が極端に違っています。
東京都の13年度は38.01 %でした。実際に払った額で見ると、税率が一番高いのは資本金1億超~5億円以下の企業で、小企業はやや低く、大企業は極端に低くなっています。10億超~100億円以下は28.97 %、100億円超の大企業は17.20 %。一方で1000万円以下の零細企業が30.07 %ですからどこかヘンです。
富岡さんは、業績がよいのに低税率の大企業46社(13年3月期~14年3月期)をリストアップしています。トップは三井住友FGで、3300億円の純利益に対して払った法人税は600万円だけ。2位ソフトバンクも3100億円に対して1000万円。3位みずほFGは5200億円で5億1400万円と、いずれも税率0.1 %未満です。三菱UFJ、野村などの銀行や証券、ユニクロ、丸紅、アステラス製薬、第一三共、キリン、住友商事、オリックス、京セラなどの有名企業はすでに20%以下です。それより高いサントリーと日産自動車が21%、武田薬品26%、トヨタ自動車は31%台です。
富岡さんの著『税金を払わない巨大企業』(文春新書)によると、いくつかの優遇策のうち、国内他社の株式配当金は全額、海外子会社の配当金は95%を利益に算入しなくてよいという制度が一番寄与しているようです。なるほど、銀行が税金を払わず、日本企業が次々に海外の優良会社を買収するはずです。