田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(70) 女性を本当に登用できるのか
最近、女性の働きやすさ、女性管理職の登用、といった新聞記事が目立ちます。9月の安倍内閣の改造人事で、何人の女性が閣僚になるか、といった話題も出ています。また、過労死防止法が国会議員の賛成で成立したといううれしいニュースや、「すき家」の深夜1人勤務の解消などの話題も関連があります。
企業や公務員の女性管理職は欧米が、3、4割なのに、日本は1割です。理由は単純。日本では長時間労働が原則で、家庭や育児に時間を割いていては状況に対応できないからです。記者時代、他社との競争テーマでは、夜11時、12時から打ち合わせ、なんてことが普通でした。決められた休日を取るような花形記者は1人もいません。女性記者は関係のないひまネタか、オフィスの連絡担当。経験が積めるはずがありません。家庭欄、婦人欄など女性の分野で、ちょっと光る女性記者を時に刺し身のツマのように登用、というのがあのころの新聞社でした。
企業にとって一番コストがかかるのが人件費です。同じ給料ならできるだけ長く働かせる、他社が3人雇うところを2人ですます。労働基準法の労働時間を骨抜きにし、残業代を払わず、派遣を拡大して安売り、何でもいいから利益確保、がいつの間にか日本企業の本質に変わってしまいました。過労死防止法に賛成した議員がなぜ派遣拡大にも賛成するのか、本当に不思議です。小泉内閣時代に派遣が大幅に広がり、それが若者の過労死ばかりか、貧困、生活の不安定、非婚、少子化などにつながっているのも同根です。
労働基準法には労働時間は週40時間、1日8時間と決まっています。これを厳密に守ればおそらくは男女公平になります。同じ条件下であれば、まじめで勉強家の女性がどんどん管理職になっていけます。
「それではやっていけない」という経済界の要求で、政府はこの数十年、労働時間の例外を設け、超えた場合の残業代のごまかしを認め、派遣社員で事実上骨抜きにする、などを続けてきました。それをそのままにして、ただ女性管理職の数を増やす、という姑息な手段が通用するなんてちょっと信じられません。