医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2014年8月11日

(69) 不意打ちの犠牲者に同情

 入院中の生活で、増えたのはテレビの視聴時間でした。私は普段は外を歩き回っているのが多かったので、あまりゆっくりテレビを見る習慣がありませんでした。ところが、ベッド周りでの1日は、テレビが気晴らしでした。ドラマなどは別にして、毎日必ず、午前7時、正午、午後7時のNHKニュースを見ました。
 最も強く衝撃を受けたのは、マレーシア航空機がウクライナで撃墜された事件、イスラエル軍のガザ地区の攻撃による被害者たちでした。
 共通するのは、突然の不条理の死です。横たわる機体、ぐちゃぐちゃの荷物や土産品の山。空爆で瓦礫となった住宅跡から遺体を探している人たち、けがをした子どもたちのアップの画像がくり返し流れました。涙もろくなったのか、本当に涙が流れました。
 私自身、想定外の長期入院で、不条理感が強かったのです。とはいえ、手術はある程度は覚悟、納得してのこと。それより、この人たちは、まったくの不意打ちの悲劇です。何というかわいそうな現実でしょうか。
 マレーシア航空機事件では、紛争地域の上を飛んだ航空会社にも責任がありそうですが、ミサイルを提供したロシアを責めるばかりで、ほとんど追及がありませんでした。実際に、紛争後は空路を変更し、ウクライナ上空を避けた航空会社がいくつもあったとのことです。
 ガザ地区は壁で封鎖されています。それなのに150万人もの人たちが生きていけるのは、耕作地や牧場など食糧生産が、あの細長い狭そうな地区内にあるからでしょうが、そうした話も出てきませんでした。
 それにしても、事件の根本の根本は、民族や宗教や政治的対立による戦争です。この2ヵ所以外にもアフガン、イラク、ソマリアなど、世界の至るところが戦争で、毎日、多くの人たちが不条理な死に迫られています。私たちは何をすべきなのか、何ができるのか、空しさを感じてしまいました。

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