田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(66) 予想を超えたノバルティス社員の関与
ノバルティスファーマ社の高血圧薬ディオバンの事件が大きな展開を見せました。 6月11日に東京地検が、データの改ざんにかかわったとされる同社の元社員を薬事法違反で逮捕したからです。予測はされていたものの、実際に逮捕者が出てみると、やはり医療界にとっては衝撃的なことでした。
実はその翌日、日本テレビ系の昼の情報番組「ミヤネ屋」がこの問題を取り上げ、私もコメントをさせていただきました。11日の夕方に番組のディレクターから電話があり、ぜひ出演をといわれて了承したところ、できれば大阪のスタジオに来てほしいとなり、次の日の朝の新幹線で出かけました。もともとは読売テレビの番組で、大坂城近くのスタジオで収録しているとのことです。
華やかなテレビのスタジオで収録、なんてことは、多分、1年何カ月ぶりのことで、やはり緊張しました。また、1回で何分もしゃべるわけではなく、質問に短く答える形ですから、言い尽くせなかった感じもあります。
研究者が独自に企画する医師主導の臨床試験という建前なのに、製薬企業の社員が大学の肩書で堂々と入り、しかもデータを書き換えたりしていた、というから、本当にひどい話です。慈恵医大のケースでは、医師側も途中で社員とわかりながらそのままにし、しかも論文には企業と無関係とうそを書きました。実際には企業が頼み込んでやらせた試験で、しかもその結果を医学雑誌に何百回も広告し、売り上げ増を図ったわけですから、これまでに記憶がないくらい悪質です。
東京地検の面子もあり、追及はノバルティス社の役員には広がりそうですが、医師はどうでしょうか。臨床試験の担当者、広告に協力した日本高血圧学会の幹部など、この事件では医師も結構、働いています。それにしても売り上げの急増効果に驚きです。一般の医師は個々の患者さんよりは薬の広告に動かされやすいこともわかりましたよね。