田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(63)病院図書館運動の40年
日本病院患者図書館協会の創立40周年記念パーティが昨日、 5月25日、東京・青山のレストランで開かれました。会長の菊池佑さんからお声がかかり、私も参加させていただきました。協会は入院患者が自由に利用できる図書館がすべての病院に作られることを目指して、その意義や必要性を訴えています。読書は娯楽ばかりでなく、病気に関する図書が集まることにより、重要な情報源です。医師からいわれた治療の中身を患者が理解するためにも重要です。こうした情報は治療効果を高めるともいわれます。
菊池さんは大学の図書館勤務の傍ら、とくに病院図書館に興味を持ちました。世界の病院図書館の状況から日本にも必要と確信、1974年に周りの図書館司書らに働きかけて前身の研究会を組織、病院図書館運動を精力的に展開してきました。1983年にはこの分野の最初の本『患者と図書館』を出版されています。
私も早くからその活動に注目し、何度か応援しました。手元のスクラップでは84年 3月に、朝日新聞健康面のトップで「病院にもっと普及していいもの、それは図書館」といった記事を書いています。
パーティには医療問題弁護団の鈴木利廣弁護士も参加されていました。「患者の権利」運動が同じ80年代に盛んになり、私もこれには一層力を入れて報道しました。鈴木さんのスピーチを聞きながら、病院図書館も患者の権利の一部のようなものであり、日本ですぐに普及しなかったのは、患者中心の医療でなかったからだな、と感じました。
菊池さんらの40年の努力のおかげで、状況は相当改善しました。患者用の図書室がかなりの病院にできましたし、静岡県立静岡がんセンターのように専任の司書を置いた患者図書館も現れました。協会のホームページも充実し、病気や病院に関する本や記事を調べることができるようになっています。
それはそうと、白のブレザーと帽子、蝶ネクタイ姿の73歳、菊池さん。音楽学校で習っているとのことでウクレレを弾き、クラリネットも吹き、歌い、と半分は独演会の趣でした。「変わり者でないと40年もやれませんよ」で、納得。