田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(57)広がる健康基準、を歓迎
日本人間ドック学会と健康保険組合連合会が、健康の新しい基準値を決めた、という話がありました。いま人間ドックにかかると、「要精密検診」と判定された検査値でも問題なし、とされる範囲が広がるというニュースです。
血圧や肥満、コレステロールなどの検査値の扱いは従来、関係専門学会の基準をそのまま使っていました。今回、人間ドック学会は2011年に人間ドックを受けた約150万人のうち、持病がないなどの条件を満たした約34万人 (23%) を「健康な人」と認め、そのうち5万人の検査値を分析しました。その結果、これまでの正常とされていた検査値の幅を広げるべきだとなったというものです。
たとえば血圧の「異常なし」はいまは上は130未満ですが、147でも「健康な人」と認められました。いまは25以上を肥満としているBMIという肥満度指数も、男性は27.7、女性は26.1まではいいようです。総コレステロール量は140 ~199 が正常でしたが、男性は151 ~254 、女性は年齢によりますが、145 ~280 までが健康とみなされうるといいます。人間ドックでのチェック幅が狭くなると、病院を受診し、「お薬を出しましょう」といわれる人たちがかなり減る可能性があります。
さて、これが医療界でどう受け止められていくか、です。もともと日本の基準は厳しすぎます。国際的には肥満はBMI30以上ですし、日本以外の国は、閉経で高くなる女性にコレステロール低下剤を処方していないのです。私には、日本の学会は患者さんを何としてでも増やそうとしている集団に見えます。
ドックでは健康扱いなのに、体調不調で病院を受診すると病気、という二重の基準が続くのは好ましくありません。人間ドック学会の切り込みで基準値論議が始まり、学会の横暴を規制して統一できたらすばらしいことです。
実際の運用は来年4月からだそうです。近く検診を受ける私としては、その1年が待ち遠しい感じです。