田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(54)クリミア併合にも理あり
ウクライナ共和国の政変にからんで、その一部であるクリミアをロシアが併合する事態になり、米国・EUとロシアの関係が険悪になっています。基本的には米国寄りのメディアは、ロシアのプーチン大統領らのどさくさまぎれの暴挙、というイメージですが、本当なのでしょうか。
先日の住民投票ではロシアとの併合を望む票が9割を超すという圧倒的な結果でした。心から大喜びといった感じの住民を報じるテレビでは、女性が興奮気味に「70年間、私たちは一度も意見を聞かれたことがなかった」といったコメントが印象的でした。
クリミアといえば思い浮かぶのはクリミアの天使・ナイチンゲールぐらいで、実は私はその歴史もよく知りません。それなのにちょっぴり関心を持ったのは、先日、朝日新聞の元編集委員が何人か集まった会で、先輩・田岡俊次さんの話を聞いたからです。
田岡さんは軍事問題にくわしく、しばしばテレビにも出ています。彼によるとクリミア地方はもともとロシアで、ロシア人が多数の地域。それがソビエト連邦のころ、ウクライナ系のフルシチョフが突然、ウクライナに移管してしまったというのです。「日本が朝鮮半島を支配していた時に、日本人の住む対馬を、近くて便利だからと朝鮮総督府の管轄にしたら、独立して韓国の一部になったようなもの」と、田岡さん。
へーえ、そうなのか、と感心したのですが、メディアではそんな話はほとんど出てきませんでした。そうしたらつい先日、『週刊現代』のコラムで大橋巨泉さんが、同じ理由から「クリミア問題はロシアに分あり」と書いているのを見つけました。巨泉さんもすごいことを知っているんだ、と改めてびっくりしました。
その後、このような話はメディアには出たか出ないかで、ほとんどはウクライナの手続きでは住民投票は無効だ、ロシアに制裁を、といった論調ばかりです。クリミアの住民を抜きにしてクリミアを論じていいのでしょうか。