田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(521)重要なのに報われない歯科技工士
今年は半年以上も歯科医院に通いました。歯周病のため上の奥歯がグラグラしてだめになり、抜いた後、インプラントを入れることになったのです。10年も前に別の医院でインプラントを入れており、2回目になります。歯科医の先生が抜歯をし、あごの骨に金属の棒をねじ込み、歯列の型取りをします。そして11月 8日にきれいな人工の歯を取り付けました。歯は先生と懇意の歯科技工士さんが作ってくれました。
11月10日に開かれた東京歯科保険医協会のメディア懇談会で、その歯科技工士という職種が高齢化、低収入で深刻な状況にあることが話題になりました。山本鉄雄・副会長の説明によると、同協会は今秋、都内の歯科技工所を対象にアンケート調査をし、263技工所の回答を中間結果としてまとめました。
技工所の開設者は今は60代と50代で 6割。65%が開業20年以上経ち、昨年の可処分所得は48%が 300万円以下と意外な少なさです。閉所を考えたことが「ある」は50%で、理由は「採算が合わない」61%、「将来展望がない」50%、「高齢」「設備投資が厳しい」各49%の順でした。後継者は「いる」11%、「いない」83%。歯科医師との契約で決まる技工料金は30年間も上がっておらず、低賃金長時間労働に苦しんでいる技工士さんが少なくありません。「技工所が直接保険請求できる」ことへの要望が57%で最多でした。
こうした状況を反映し、技工士養成学校の廃校や募集停止が続いています。かつて全国に70校2000人ほどだった入学者が47校 780人ほどに減っています。また、若い技工士さんが見切りをつけて転職するケースも増えているそうです。「このままだと10年後には歯科技工物の安定供給が困難になります」と、山本さんも指摘されていました。
低賃金長時間労働というと介護労働がすぐに思い浮かびますが、歯科技工士も負けていないようです。厚生労働省は技工料金の保険点数化や直接請求できる制度を真剣に考えるべきだと思いました。