田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(52)この程度のインチキは…
あれもこれもと広がった食品の偽装は一段落のようですが、その代わり、いろんな偽装が次々に露顕しています。
先週は「全聾の作曲家」佐村河内守さんの謝罪会見がありました。まったく耳が聞こえず、絶対音感を頼りに作曲活動を続け、「現代のベートーベン」といわれていたのに、実は作曲はすべて代作者が書いていたという話は本当に驚きです。しかも、まったく耳が聞こえないのではなく、難聴ということです。全聾から多少は聞こえるようになったとの説明も眉唾ですが、徹底したインチキぶりには敬服です。黒めがね、ひげづらで、いかにも聞こえないような風貌でしたが、会見では一変していたのも重ねて驚きでした。
東日本大震災のドキュメンタリー映画「ガレキとラジオ」のやらせも意外でした。娘と孫を津波で失った女性が、災害ラジオに励まされるというストーリーなのに、その女性の地域は電波が届いておらず、しかも女性は聞いていませんでした。それをいつも聞いていたといわせていたという話です。ドキュメンタリーは実話なはずで、これではまったくのフィクションです。
厚生労働省が身内の法人の便宜のためにした工作が露顕しました。失業者や転職者の訓練事業280 億円をそもそも厚労省OBら官僚が就職している民間法人が管理するというのもおかしいのですが、その実務は入札で決めます。入札に応じたのは厚労省からの出向者が76人もいる独立行政法人だけでしたが、当初、厚労省はその法人が持たない資格を入札の条件としていたのに、法人からの訴えで、資格を外して再募集しました。このうっかりミスのおかげで「不公平」な入札が明るみに出ました。しかも、どうやらその法人以外は満たしにくい別の入札条件があり、仕組まれた出来レースのようなのです。
だれもかれもがインチキだと、きっとこんな程度のことではいずれ、だれも驚かなくなるんだろうな、って思ってしまいます。