医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2023年5月15日

(497)ロシア中国より自由度は高いけれど

 うーんとうなりたくなったのは報道の自由度です。国境なき記者団が5月3日、2023年度の「報道の自由度ランキング」を発表しました。
 このランキングは2002年度から実施されています。各国のメディア、弁護士、社会学などの専門家が、メディアの独立性、多様性、透明性、情報生産のインフラなどの質問項目に対する回答と、各国特派員がジャーナリストに対する暴力の威嚇や行使などへの評価を一定の基準で点数化したものです。
 2023年の日本は180カ国・地域のうちの68番目でした。昨年の71位より上がったとはいえ、G7・7カ国の圧倒的な最下位でした。日本のメディアは政府の圧力に屈し、「ジャーナリストは政府に説明責任を負わせる役割を果たせていない」との評価です。
 まあ、その通りでしょう。スリランカ女性の死亡で扱いが批判された出入国管理局にからむ入管難民法改正案、袴田さん事件、世界から際立って遅れている妊娠中絶薬の認可や脳死臓器提供・臓器移植、原発再稼働への動きなど、メディアはもっと政府に迫って当然と思いました。あいまいな説明や虚偽答弁は今や日本政府の伝統のようです。
ネットでランキングを見ると、自由度が高いベスト5はノルウェー、アイルランド、デンマーク、スウェーデン、フィンランドの順で北欧諸国ばかり。G7はカナダ15位 (以下、位を略す) 、ドイツ21、フランス24、イギリス27、イタリア41、アメリカ45、でした。
 日本より上の国はオランダ 6、スイス12、オーストラリア29、韓国47などです。日本より下はウクライナ79、イスラエル97、タイ106 、インドネシア108 、フィリピン132 、インド161 、ロシア164 、イラン177 、中国179 、北朝鮮180 と強権の国が目立ちます。2019年からの 5年間、日本は66位から71位で、大きな変動はありませんでした。
 私の現役の頃から政治部 (全般) と社会部 (司法担当) の記者には政府・官庁の強い圧力がありました。有力政治家担当の記者は身内同然で、意向に沿ってフェイクニュースを流すこともあるし、秘書から議員への道を目指す記者もいました。司法は法務省・裁判所・検察ベッタリで、当時は変な判決が出ても批判厳禁でした。それがひどくなったと感じる記事が近年増えているのが残念です。

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