田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(494)若い人の政治家不信は分かるけれど
岸田文雄首相が4月15日、爆発物を投げられた事件は、昨年7月、安倍晋三・元首相が銃撃された事件とそっくりの印象です。
今回のK容疑者は24歳、昨年のY容疑者は41歳ですが、いずれも関西人男性で、一般人が近づける選挙応援演説を狙いました。2人とも政治家に対する恨みや不信が根底にありました。爆弾と銃は手作りで、知識も技術もたいしたものです。
最大の違いは安倍元首相が弾に当たって亡くなったのに対し、岸田首相は爆発から逃れた点です。もっとも、これは警備陣が首相近くに落ちた筒状物を払い退けたおかげで、警備の違いだったとも言えます。
Y容疑者は宗教団体の旧・統一協会を恨んでいました。母親が会員で、巨額の献金で破産し、家族の生活が破綻しました。統一協会に近い政治家として標的にしたのが安倍元首相でした。元首相は確かに統一協会に密着しており、その影響もあって多くの政治家が支援を受けたり、協力したりしていたことが明るみに出ました。
一方、K容疑者は、30歳以上の被選挙権や供託金の制限で昨年の参院選に立候補できなかったのは憲法違反だと国に対する損害賠償請求訴訟を起こしています。その関連資料やツイッターで若者が立候補しにくい選挙制度やY容疑者同様に安倍元首相を批判、元首相の国葬を実行した岸田首相も批判しています。Y容疑者の主張が大きく報道され、確認されたことがK容疑者の事件につながったと思われます。
母親の財産処分に家族がどこまで口出しできるのだろうか、供託金なしだと売名やおふざけで何百人もが立候補するのではなかろうか、など2人の主張には疑問もあります。さらには処罰を覚悟しての犯行である直接の攻撃行動は理解に苦しみます。
米国では若者の銃乱射事件が際限もなく続いています。つい不安になりますが、第3、第4の類似事件がないことを願っています。