医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2022年9月20日

(466)念願の結核「低蔓延国」に

 悲しいニュース、憤りたくなるニュースばかりの中で、珍しくうれしかったのは、「日本が結核の低蔓延国(ていまんえんこく)になった」との先月末の厚生労働省の発表でした。世界保健機関(WHO)は新規結核患者が10人未満の国を結核対策に成功した低蔓延国としています。日本は2018年以降、12.3人、11.5人、10.1人と年々減ってきており、低蔓延国は目前に迫っていました。注目の2021年の新規感染者は 1万1519人で、人口10万人あたり 9.2人。関係者の長年の願いがかなったのです。
 感染症と言えば今は新型コロナですが、開発途上国でまだ蔓延しているのがエイズ、マラリア、そして結核の 3大感染症です。エイズは人から移るウイルス病で2019年の感染者はアフリカ中心で3800万人、死者は年間70万人に達しています。蚊に刺されて移る原虫病のマラリアには南アフリカの子ども中心に毎年 2億人もが感染、40万人が亡くなっています。咳などに含まれる細菌が原因の結核は感染者1000万人で死者は一番多い 140万人。ただし、うち20万人はエイズとの重複感染者といわれます。
 2019年からの新型コロナは感染者 6億人、死者 650万人と、これらをしのぐ勢いです。さらに弱毒化して定着すれば 4大感染症時代が来そうです。
 低蔓延国入りの日本ですが、欧米先進国の結核はと見ると、2019年の米国は 3人、オランダやデンマーク、ドイツなどは 5人台、英国、フランスは 8人台です。一方、アジアは中国、韓国が50人台、タイ150 人、ベトナム 176人、フィリピン 554人など、まだまだ結核が蔓延しています。
 感染者の年齢は ①80代 (29%) ②70代 ③90歳以上 ④60代で、合計で 7割を超えました。意外や、結核は高齢者の病気です。若い時期に感染し休眠中の結核菌が免疫力の低下で目覚めて動き出すのだそうです。コロナに負けず、食事や運動、睡眠で免疫力を維持しなければいけません。高齢者に次ぐ 5位の20代は 7割が外国生まれの留学生や研修生で、日本に来て感染が見つかったり、周囲から感染するケースです。行政の親切、適切な対応が必要です。               

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