医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2014年1月21日

(45)明日の医療者への期待

 昨日1月20日の午後、私は大阪・高槻市の大阪医科大学で話をさせていただきました。微生物学教室の佐野浩一教授が企画されている「医学概論」の一コマで「社会から見た医療・医学」といった授業です。数年前からは身近な新聞や雑誌の医療・医学記事を自分で選び、その要約や問題点、自分の考えなどをレポートにしてもらい、私が目を通して、それを題材に学生さんとやり取りをしています。
 階段教室は大阪医大の医学部と看護学部1年生、120 人ほどでいっぱいでした。私のメッセージは「温かい心、豊かな社会性ある医療者をめざしましょう」でした。医療は人に役立つすばらしい分野であること、医療者だけでなく病気を抱える患者さんとの共同作業であること、患者さんの期待に応える技術だけでなく、患者さんの心を開く必要があり、そのためには社会のいろんなことに関心を持ってほしい、などと話します。
 いまの学生さんは新聞や雑誌をあまり読まなくなっています。ほとんどがネットでの閲覧です。ネットのニュースは短い要約記事がほとんど。ネットは便利ですが、キーワードを知らないと画面に出てきません。その点、新聞は隣の記事、その隣の記事が自然と目に飛び込みます。忙しい医療者は新聞などはあまり読まないのに、患者さんは結構、読んでいます。自分の病気に関する記事だとなおさらです。社会への関心の窓口として、学生時代から新聞や雑誌に少しでも親しんでほしい、といったことを話しました。
 その後はレポートです。佐野先生が宿題を出した12月の分がほとんどですが、60とか70の違った記事が選ばれています。降圧剤事件、薬のネット販売、難病の患者負担、がんの放置療法、出生前診断、結核の感染、ノロウイルス、被災地の医学部新設などいろんなことが報道されています。よく書けていると思った学生さんに記事の内容を説明してもらい、意見を聞いたり、私が余分なひと言を加えたりしました。
 覚える知識の多い医療分野ですが、将来の医療者にはぜひ、自分で考える習慣をつけてほしいものです。

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