田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(44)どうなる徳洲会病院グループ
1月12日の『朝日新聞』朝刊に「徳洲会医療 岐路」という大きな記事が出ました。選挙違反時間が猪瀬都知事に波及、大きな話題が続くだけに、全国の病院への影響は日増しに大きくなっているようです。私の親しい方も何人か系列病院にいますが、「患者さんが少なくなった感じ」と話していました。
徳洲会病院は1973年開設の松原徳洲会病院 (大阪) から、今日は66病院に増えているそうです。24時間救急を受け入れる、患者中心の医療を旗印にしてきました。今でもたらい回し事件がありますが、都市部の病院も医師不足で、とくに救急体制が不十分です。まして、田舎には医師は行きたがりません。創設者の徳田虎雄さんは採算を度外視し、出身地の奄美を始め、医療過疎地に病院を次々に建設しました。都市部の若手医師は年に1カ月とか2カ月、交代で医療過疎地の系列病院に出張しています。ベテラン医も地方の病院での特殊手術や特殊外来を手伝わされます。
私はこうした徳洲会の取り組みはとても素晴らしいと思っています。そもそも、24時間救急や地域医療は当然のことで、民間がやれなければ、むしろ自治体が率先してすべきことです。しかし、徳洲会は医師会の反発を受け、自治体もしばしば非協力的でした。
徳洲会病院も最初は医療レベルは決して高いとはいえませんでした。しかし、病院数が増え、大学医局に反発して飛び出した優秀な医師を受け入れるようになって、どんどんレベルアップしました。国内有数の技術を売り物にする病院も出ています。
病院数が多いとグループ内で医長、部長、副院長などと段階を踏んで昇進できます。若い時は診療だけでよくても、年取ってくると、経験を活かせるようなポストも必要です。院長や部長が常に大学から雨下ってくる病院はいつかやり甲斐を失わせます。
やがて徳洲会が分裂し、病院の名称や経営者が変わってしまうと、これまでの徳洲会病院のいいところが消える可能性があります。また、救急医療や地域医療が後退する地域も出ます。
厚生労働省や自治体が「病院に任せきり」といういまの医療体制を放置したまま、というのはとても残念です。