田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(437)アサリの産地偽装に驚き
熊本県産と表記されたアサリのほとんどが中国や韓国産であることが分かったとのテレビや新聞の報道には驚きました。 1月31日に熊本県知事は産地偽装の解明のため県漁業協同組合連合会に天然アサリを 2カ月間出荷停止するように要請、県漁連も協力を約束したとのことです。
何よりも量が桁外れです。翌日の農林水産省発表によれば、同省は昨年10月から12月にスーパー約1000軒を調査しました。それからの推計では 3カ月間に売られたアサリ3138トンの99%が国産とされ、しかも約 8割2485トンが熊本県産とされていました。ところが同県産は近年は生産が激減し、前年2020年はわずか21トンでした。何とその 100倍以上が流通しているわけです。遺伝子鑑定の結果、同県産のはずの市販31パックのうち30パックが中国・韓国からの輸入品と見られることも分かりました。
私も知りませんでしたが、水産物は一番長く育てた場所を産地にできる変な規定があるそうです。中国の生育期間を短縮し、それより少し長く熊本県で育てたとの書類を出せば同県産として日本では高く売れます。今回、メディアに登場した福岡県の水産物卸売企業社長は仕入れ先に生育期間を短くした証明書を書かせ、熊本の海で短期間育てたアサリを熊本県産として毎年何千トンも売っていて摘発され、昨年有罪判決を受けました。偽装の2~ 3割はこうしたごまかしで、残りの 7~ 8割はもっとひどく、書類の書換えだけで販売されたと見られています。2018年にはそうして逮捕された業者もありました。
漁民や卸売業者はこれらを身近な事件として知っていたはずですし、アサリが県内で取れる量の 100倍も出回っているのを不思議に感じないはずがありません。すでに農水省でさえ気づいていたようですから。
東京で長く暮らせば東京生まれ、江戸っ子になるような規定がそもそもおかしいと思いますし、簡単に偽造できるような書類とすればそれも問題です。
熊本県がどのように対応、処理するのかに注目です。