田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(436)救急医療自体もSOS発信
新型コロナのおかげで救急医療に支障が出ています。患者を受け入れる病院がない、救急車の中で 2時間も待機させられた、必要な手術ができない、といったニュースが報じられています。
東京の国立国際医療研究センターでは院内で駐車した救急車内で 5時間も過ごした患者もありました。それで助かればいいとして、10カ所の病院に断られ、ようやく同センターに到着した心筋梗塞の80代女性は助からなかったそうです。
救急以外の従来医療も従来通りにやれなくなっています。コロナ病床に手を取られて手術や検査の延期、そのための入退院の延期など現場の混乱が目に浮かびます。救急大腿骨を骨折した90代女性は江戸川区の病院に転院できましたが、手術できる病院を探して82カ所目だったというから驚きです。
医療の目的は患者の健康回復です。難病と違い、適切な処置で治せる救急こそ医療の基本です。私が思い出すのは1986年の大学生たらい回し事件です。追いかけた大学生が強盗に刺されたのですが、専門医不在や満床で 5つの救急病院が断り、40分も救急車内にいた大学生は結局亡くなりました。これを機に国は救急体制を抜本的に改革したはずなのですが、ほとんど改善されていません。救急医療費の不採算、搬送 (総務省) と医療 (厚労省) の協力体制の根幹が変わらないからです。
救急でもコロナでも従来医療でも、重要なのは救命です。必要な救急病床は確保したうえで、従来医療の余裕部分を感染症に回し、トータルの死者を減らすべきです。オミクロン株は軽症者が多いというものの、重症化する人をどうやって適切に選ぶかが問題です。その点で、自己での申告、判断任せは危険が多いのではないでしょうか。かといって保健所や自治体の人手不足は解消しそうにありません。
やはりマスク、三密回避による患者側の自衛が大事です。私の場合は低栄養改善のため食べる努力も加わります。