田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(431)子宮頸がんワクチンの勧奨へ
ワクチンと言えば新型コロナ対策、です。感染力の強いオミクロン株が世界中で増えており、従来のワクチンの予防効果が落ちる可能性があると指摘されています。本来は 2回で完結だったワクチンの 3回目接種も始まりました。
でも、ワクチンはコロナばかりではありません。幼児・小児期にはたくさんのワクチンが接種されるし、大人ではインフルエンザや肺炎球菌ワクチンも勧められています。
医療関係者の間で最も話題になっているのは子宮頸がんワクチンです。子宮頸がんは女性の病気で、年に約 1万人が発症し、2800人が亡くなっています。40代、50代での発病が多いがんです。ワクチンは子宮頸がんの原因であるパピローマウイルスの感染を予防する効果があり、欧米の多くの国では少女期に接種しています。日本も2013年に公費による定期接種になりましたが、副反応の訴えが相次いだためほとんど接種されないままになっていました。
問題の副反応は接種場所以外の広範囲の痛み、手足が動きにくく、記憶障害などの「多様な症状」です。先月13日に開かれた厚生労働省の検討部会は、ワクチンの有効性が欧米で確認されたことに加え、こうした症状は未接種の人でも見られることから安全性に問題はないと結論づけました。これを受けて厚生労働省は定期接種を勧奨していく方針です。当初通りなら、中学 1年で 3回の接種になりそうです。
もともと薬害が多かった日本は諸外国に比べるとワクチンの副反応には敏感です。接種後の症状がワクチンのせいかどうか、判断は簡単ではありません。遺伝的な素質、食物、生活習慣の違いもあり、欧米には見られない副反応が日本では出るということもあり得ます。一方で、子宮頸がんの予防も重要で、暗い予測があるように、日本が突出した子宮頸がん多発国になるのも困ります。
副反応かも知れない症状は見逃さず、治療法も工夫しながら接種を進める、ということになるのでしょう。