田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(429)高齢運転者事故をどう防ぐ
高齢者の運転事故が大きな関心を呼んでいます。今月も大阪狭山市のスーパーの前で乗用車が暴走、87歳の男性が亡くなりました。89歳の運転者は「アクセルとブレーキを踏み間違えた」と話したそうです。思い出すのは2019年 4月、30代の母と 3歳の女児が死亡した東京の池袋暴走事故。この件では87歳の通産省元高官は「車の異常」に固執し、司法や社会は「踏み間違え」を主張し、対立しました。その間、タクシー運転手までも含む高齢運転者の事故が何度も繰り返されました。車側の問題や、踏み間違えても暴走までしないアクセルの工夫も検討の余地がありそうです。
75歳以上の後期高齢者が起こした死亡事故は昨年は 333件でした。全体に占める割合の13.8%は特別増えてはいないようですが、報道ではよく目につきます。事故での補償や刑事罰が痛々しいし、家族が免許証の自主返納を勧めても、大事故までは「私は運転がうまい」と自負している高齢者が多く、交通の便がよくない田舎住まいでは車がないと買い物や外出がままならない、のも事実です。「必要な時は私が送り迎えしてあげるから」と約束した息子や娘があまりあてにならない、といった事情も加わります。
問題を解決しようとすれば、自治体や地域が高齢者が我慢できる程度に不便を和らげる必要があります。理想は自動運転車の早期実現ですが、それまでは自治体が補助して商店街や主な役所、病院、運動施設などを日に何度も巡回してくれる循環バスが欲しいところです。それを補う相乗り車、ボランティア車、あるいは代理の息子や娘制度なども考えられます。仮に年に何回かの大きな死亡事故を社会として防げる、と考えれば決して無駄とはいえないのではないでしょうか。
運転者が亡くなったための原因不明事故や「よく分からないうちに事故が起きていた」 というケースの一部には脳卒中やめまいなどの病気があるかも知れません。免許の許諾ではなく、安全運転に役立つための健康チェックも考えられます。