田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(426)内部告発した人を守れますか
「公益通報者保護法」が改正されるとの記事が先月の新聞にありました。勤務している企業など事業者の不正を告発した人を守ろうとの法律は2006年から施行されています。ところが実際に内部告発をすると逆に受け付け部署から本人の上司に知らされ、ひどい場合は解雇され、良くても左遷や冷遇される事例が後を絶ちませんでした。
このコラムで最近書いたなあと調べてみると、2018年 5月、何と 3年半も前でした。牛肉偽装を告発した人の悲惨な状況を描いたNHKテレビの特集がきっかけでしたが、2002年の告発が法律の成因だったのでしょう。2007年にはドキュメンタリー映画ができ、NHK特集も2008年以来いくつも放映されています。
日本の仲間社会はずっと変わりません。みんなでやっていることを外部に知らせる、それも不正だと告発するのは、仲間の和を乱す悪質な行為、との認識になります。告発している裏切り者が誰かを、その部署や上司に伝えるのは常識、罰するのも常識、となるわけです。そうしたことはすべきでなく、告発者を守ろうというのが保護法です。
業界ぐるみの談合も似たような話です。自主申告者は課徴金が減免されるものの、明らかになるのは何年に 1件しかありません。保護法も施行から15年経ちましたが、社会が大きく変わったとはいえません。首切りや左遷が表に出ることは確かに減りましたが、冷遇されている告発者は現実には何十倍、何百倍もいるはずです。そのために改正が必要になったのでしょう。
保護の対象者は従業員から、 1年以内の退職者と役員にも広がりました。良いことですが、退職 1年の期限付きが疑問です。また、事業者でない警察や報道機関への通報は事実の証明などの規制があります。さらには、消費者庁の勧告に従わない事業者は名前を公表する程度では、まだまだ先が遠い、という感じがします。
改正法はすでに条文も公表され、来年 6月から施行されます。必要な準備期間を考えて法が定める最大限の先送りとのことですが、消費者庁も本心では保護に乗り気でないのでは、とついつい勘繰ってしまいます。