田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(424)生活難に直面の若い人たちに同情
「30年増えぬ賃金 日本22位」との見出しの記事(10月20付け『朝日新聞』)が目に止まりました。1990年代初めのバブル崩壊以来、日本経済は「失われた30年」とも呼ばれる低迷が続いているとの内容です。
主要国を対象にした 2つの国際比較統計が書かれています。経済協力開発機構 (OECD)によると、2020年の日本人の平均賃金(424万円)は加盟35カ国中の22位。1990年から米国は47%、英国44%などの上昇に対して日本は 4%の伸びにとどまりました。韓国は80%台で額でも日本を上回りました。国際通貨基金(IMF)によると、背景の名目国内総生産(GDP)は、日本は米国、中国に次ぐ第 3位ですが、1990年との比較では、中国は37倍は別格としても、米国は3.5倍、ほとんどが 2倍超なのに日本は 1.5倍にとどまっています。
海外から最近帰ってきた人は、日本の物価が安いといいます。賃金だけではなく物価もこの30年間、あまり上がりませんでした。それが、石油の値上がりなどで今月から物価が上がり始めています。雇用が不安定なコロナ下、賃金がこのままでは生活難の人たちがますます増えてきそうです。
何よりも大きかったのは派遣社員、非正規雇用の拡大でしょう。自由な働き方がずいぶん美化されました。私は担当外で関心は薄かったのですが、政治部の著名編集委員が何度も「だまされた」と嘆いていたのを思い出します。日本ではなぜか、働き手より雇用者の自由が利く制度になってしまうのです。いつの間にか新聞社の事務部門までが、子会社からの派遣社員ばかりになっていました。
就職してもすぐやめる若者の多いことにも驚きます。学生時代まで好きなことだけして過ごせたからでしょうか。派遣やアルバイトの方が気楽、な半面、不安定は当然です。その逆に、過労、ノイローゼ、うつ病、自殺まで進む正社員がいます。ついつい考えこんでしまいます。