医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2021年10月18日

(423)日本の保健医療制度の問題は

 新型コロナのおかげで今年はほとんどの集会や勉強会、講演会などが中止になってしまいました。そんななかで先日、知り合いの先生が中心の勉強会が開かれ、私も話すように言われました。医療がテーマです。
 日本の保健医療制度は素晴らしいと言われていますが、実はそうではない、というのが私の結論です。医療はだれのためにあるかと言えば、もちろん患者のためです。しかし、日本の医療の中身は病院・医師任せで、質が軽視されています。これでは患者のため、患者に役立っているとは言えません。
 日本の各社の自動車はどれも高品質ですが、病院のレベルはピンからキリまでバラバラです。A病院では上手な医師が手術して 1週間で退院できるのに、B病院では下手な医師が手術に失敗し、再手術や感染で 3カ月も入院させられ、しかも治りません。ところが、そんな病院の方が医療費が高く利益が上がる変な仕組みです。これでは病気を治して欲しい、症状を軽くして欲しいと願っている患者のための医療とは言えません。
 新型コロナでも問題になりましたが、臨床の基本であるべき救急制度が日本は不十分です。病院にとっては不採算部門なので、救急患者の受入れ病院が何時間も決まらないということが現実に起こります。
 医師任せの診療では不要な薬、有害な薬が乱用されています。副作用の懸念から米国では 1人の患者には 3 ~4 剤が限度とされる薬が日本では10剤以上も処方されています。参加した方から、入院中に認知症で酷かった女性が家庭に戻ったら正常になり、原因は病院が毎晩飲ませていた入眠剤だったと分かったなどの報告もありました。
 日本の患者の半分が高血圧、糖尿病、高脂血症で、過剰な薬を処方されています。こうした医療を改める必要を強調しました。一方で、確かに有効なのですが、超高額の薬が次々に出てきています。保健制度がいつまで持つか、は心配です。

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