田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(42)がっかり猪瀬さんの変身
猪瀬直樹・東京都知事の話には正直のところびっくりし、あっけない結末にはがっくりしました。事件そのものは単純な話です。猪瀬さんは都知事選の前、昨年11月に徳洲会の徳田虎雄理事長(当時)を訪ね、応援を頼みました。約 2週間後、息子の徳田毅衆院議員から5000万円を受け取り、貸し金庫にしまいました。使わなかったので今年2月に返すつもりがつい延びて、今年9月に返済しました。
猪瀬さんは表情も恐く、舌鋒鋭く追及する、というイメージでした。それが時々しか見ないテレビでも、汗だくだく、言いよどみ、少しずつとはいえ次々に訂正、というのだから目を疑うようでした。政治がらみの裏金だとまずいと、あくまで個人的な借金としますが、庶民感覚からは不自然です。挨拶回りで、5000万円ものお金を貸す、借りる、という話になるはずがありません。使途、利息、返済日などがないのもおかしいわけです。
仲良くしていた石原さんの後任で、病院の許認可権もある知事には何かと世話になるからと、徳田さんが気前よくポイとくれたお金でしょう。ところが今年9月に選挙違反で徳洲会本部が家宅捜索され、これはやばいとの泥縄の対応から支離滅裂になってしまったようです。
猪瀬さんのような、堅物でうるさそうな人物ですら、政治家 (アマチュア級との自認でも) になれば、5000万円の現金にも驚かなくなり、右翼の人とも付き合い、ウソも平気に変身する、というのはすごいことです。
そういえば、大阪・徳田病院のころの熱血医師も、代議士となり、病院グループ総帥と階段を上がるにつれ、変身した気がします。徳洲会グループの医師や看護師は、仕事は厳しく給料は安く、ややブラック的なところがありましたが、以前は患者のためであり、悪い医療制度のせいでした。それが、いつの間にか、身内にお金が落ちる仕組みに変わっていたのが驚きです。
それはそうと、当方は変身もないまま今年も終わりそうです。