田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」
(41)消費税は企業の税金を減らすため?
政治というのは本当に信じられないほどひどいものです。先週金曜日の新聞紙面には自民、公明両党が決めた来年度の税制改正大綱というのが載りました。一言でいえば「個人は増税し、その分、企業は減税する」という内容です。
消費税が来年2014年4月、現在の 5%から 8%に上がります。消費税は収入の低い層ほど影響が深刻です。そこで、公明党は食料品などの軽減税率を要求してきましたが、結局は減収を嫌う自民党に拒否されました。そのうえ、15年からは相続税が上がったり、軽自動車の税金が上がったりします。やや高収入の層ですが、16年からは所得税も上がることも決まっています。
一方、景気回復目的と称し、企業の税金は安くなります。黒字企業に課せられている復興特別法人税が1年早く終了し、これだけで8000億円の負担軽減になるそうです。そのほか、設備投資減税や国家戦略特区での優遇策もあります。さらに、これまでは課税されていた大企業の交際費は半額が無税になります。
「政府は企業減税をするために消費税を上げるのだ」「消費税はもともと、企業の税金を個人につけ回す目的で考えられた税だ」という、うがった見方も聞きました。日本に消費税が導入されたのは89年ですが、全国保険医団体連合会の資料によると、その当時の法人税の基本税率は40%でした。それが37.5%、34.5%、30%と段階的に引き下げられています。その結果、89年から09年度までの21年間、国は213 兆円の消費税を得た一方で、同じ期間に182 兆円分の法人税を軽減したことになるそうです。つまり、消費税の85%は法人税減税で帳消しになった計算です。
なるほど、今回の一連の政府の動きを見ていると、あるいはそうかも知れないな、企業の減税分のいくらかはちゃんと政治家に回っていくんだろうな、と妙に納得できてしまいます。