医療ジャーナリスト 田辺功

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田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2021年6月28日

(409)良心ある官僚は立派です

 財務省の公文書改ざん問題の告発資料である「赤木ファイル」の内容が 6月23日、各紙に大きく報道されました。2018年に自殺した同省近畿財務局職員の赤木俊夫さん (54) が残したファイルで、妻の雅子さんが、自殺の原因は改ざんを強いられたからだと損害賠償訴訟を起こし、大阪地裁の求めで国が開示しました。
 大阪市の森友学園への国有地売却をめぐる改ざんでした。2016年、評価額が 9億数千万円の国有地がゴミ撤去費用がかかるとの理由で約 8億円引きの 1億3400万円で払い下げられました。森友学園の籠池泰典理事長らは安倍首相 (当時) 夫人昭恵さんと親しく、一緒にその国有地に出かけたり、そこに建てる予定の小学校の名誉校長を頼んだりしていたようです。籠池さんからそれを知らされ、財務省は何かと森友学園に有利な計らいをするようになりました。
 2017年に安倍首相は国会で、森友学園への国有地売却に関与を否定し「私や妻が関係していたら総理大臣も国会議員も辞める」との有名な発言をしました。担当部署に直接「森友に安く売ってやれよ」とは言ってないとの意味だったのでしょうが、少なくとも安倍夫人の名前や写真が出ただけで官僚は動いたわけです。
 財務省から近畿財務局へ決裁文書の修正指示があり、赤木さんらは反対したものの、結局従いましたが、赤木さんはその経緯を記録し、ファイルに残しました。改ざんや文書廃棄で有名になった財務省理財局長が直接指示したことや、赤木さんらに代わって直接の上司が改ざんするなど、当時の様子がよくわかる資料です。
 かつて官僚は政治家の変な指示は無視したものですが、政治家が官僚人事に介入する改革?が進み、保身官僚が増えました。コロナ対策の間違い、ワクチンの遅れもそうでしょう。財務省職員の何十人もが廃棄や改ざんに関わりながら平気だったことにも驚きです。亡くなられたのは残念ですが、真剣に悩んだ赤木さんは立派です。
 検察は政権寄りですし、政治家や官僚は自分たちが罪にならないよう法律を作っているのかも知れません。そうした人たちがいろんな機関で上の役職を占め、指示をくり返します。なるほど、日本は何年たとうが変わらないわけです。

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