医療ジャーナリスト 田辺功

メニューボタン

田辺功のコラム「ココ(ノッツ)だけの話」

2021年6月3日

(405)外国人に厳しいのはなぜなのか不思議

 今国会で審議中だった出入国管理法改正案の成立を政府・与党が断念したとの報道がありました。外国人に厳し過ぎると反対する声が増えており、まずは良かったと思います。入管施設に収容中に亡くなったスリランカ女性をしのぶ会が遺族の代理人弁護士の主催で 5月29日、築地本願寺で開かれ、約 500人が参列したとのニュースが続きました。
 英語講師をめざしていた33歳の女性は、同居のスリランカ男性からの暴力などで学校に行けなくなり、在留資格を失ったとして昨年 8月、名古屋入管施設に収容されました。そのうち体調不良になり、嘔吐を繰り返して衰弱、医師の診察は受けたものの、今年 3月に亡くなりました。収容者が急な発作でもなしに死亡するのは大変なことで、適切な対応や診療がなされたとは考えられません。容体から医師は女性の仮放免を勧めたのに入管は無視したようです。しのぶ会に来日した女性の妹は、姉の死の真相を知りたいと挨拶しましたが、もっともなことです。
 適切な医療を受けさせず、収容者が亡くなった事件は以前にも複数ありました。ハンガーストライキで亡くなった収容者もいます。日本の入管は収容者の健康や生命、人権に関心が乏しすぎます。
 法律の条文は難解でよくわからないのですが、改正案は強制送還をしやすくするなど、収容者にはさらに厳しくなる可能性があります。また、政府が断念したのは今国会での成立だけで、次期や次々期に延ばしただけだとすれば状況は変わりません。
 外国人軽視の風潮は入管に限らず、日本政府共通の意識のようです。技能実習生への違法な低賃金の黙認、一時的な働き手は求めるが、移民は嫌います。従って、家族の帯同は最初からは認めません。2019年には 10375人の難民申請のうち、政府が認めたのは44人だけ。0.4 %の認定率は世界一の厳しさで、46%の英国、26%のドイツ、19%のフランスなどとは比較になりません。こうした話が次々と浮かんできます。
 少子化・人口減少の日本で働いてくれる外国人に感謝すればこそ、迷惑がるのは不思議です。政治家や官僚の考えもよくわからない。

トップへ戻る